さかなのこ

看護師 中嶋

人面魚

 皆さんは、お魚はお好きですか?

 私は最近イカが好きです。

 あっ、魚じゃないか!

 先日、気になっていた映画『さかなのこ』を観ました。この作品はさかなクンの書いたエッセイ『さかなクンの一魚一会〜まいにち夢中な人生!~』を原作として、実話ではないオリジナルのアレンジを加えて脚本を作ったものです。魚が大好きな小学生のミー坊は一心不乱に魚をおいかけ、勉強はそっちのけ。当然成績も悪いものとなりますが、魚の知識だけは誰にも負けない子供に育っていきます。

 この作品で私が注目したのは、ミー坊の母親でした。

 一般に、良い成績をとり、より良い学校に進学し、良い会社に就職し、安定した生活を送ってもらいたいというのが多くの親の願いです。そして、この情報過多で不安定な現代社会において、親自身の価値観で、勝手に将来までのビジョンを描いて、勝手に不安に感じていることもあるでしょう。

 そうした社会にあって私たち親は、子供の「好き」を見落としてしまいがちなのではないでしょうか。魚ばかり追いかけるミー坊のような子供に対し、私であれば、魚ばかり追いかけていないで勉強をしなさいと言ってしまうことでしょう。

 ところがミー坊の母親は違います。子供の好きなことを温かく見守り、背中を押してあげるのです。高校の三者面談では、成績を心配する担任に「成績が悪い子もいてそれでいいんじゃないですか?この子はお魚が好きでお魚の絵を描いてそれでいいんです。」と反論し、水族館では閉館時間まで付き合い、食事は魚料理、タコに興味を持っているときには、タコ料理をつくり、という献身ぶり。

 ミー坊が大人になってから「実は魚が苦手」と、さらには家族みんなも魚が…という衝撃の告白をするお茶目なお母さん。そんな温かい家族、温かい周囲のひとたちに支えられながら、ミー坊は、さかなクンへ、そしてご存知の今や日本が誇る魚博士へ進化していくのです。

 子供の「好き」を温かく見守ってあげられる母親に私はなりたい!

 ともあれ、がしかし、自分の子供が好きなものが分からず…。幼い頃はウルトラマン、虫、サメ、電車、葡萄といっぱいあったのに、成長とともに変化しとても薄いものに。

 コロナ前はもう少し積極的だったかな。今はなりたいものも、特になく。会社員らしいです。子供たちのなりたい職業1位のまさにそれ。ただ少し希望は見えてきています。中学に入学する長男が運動部に入りたいというのです。わいわい騒ぐテンションが苦手ですが、体を動かすことは嫌いではなかったようで、その子供のやる気、嫌いではないを温かく見守りたいと思います。さかなクンのように「好き」がずっとで仕事になるほどではないにしろ、「嫌いではない」が少しでも「好き」になってくれるように。「好き」が増えて「好き」を大切にして、幸せに生きていってもらえるように。

 いや〜映画って本当に面白いですね。