「自分で決めてくださいね」と言われても…
~新型コロナウィルスのワクチンの話~

所長 毛利 一平

 暖かくなってきました。

 新型コロナウィルス感染症も減ってくるんじゃないかな?と期待していました。ひまわり診療所では2月、合計18件のPCR検査を行いましたが、陽性は1件のみ。実感として「減ってるなぁ」と思っていましたし、予定通り緊急事態宣言も解除されるといいなと思っていたのですが、まだまだ安心できる水準ではないようですね。昨日(3月4日)のニュースでは、どうやら宣言を延長するようです。

 マスクもしてるし、手洗いもしてる。外食も我慢してるし、これ以上いったい何をしろって言うんだろう…。そう思っている方も多いと思います。国や東京都の発表を見ていても、手詰まり感が漂っています。

 となるとどうしても期待したくなるのは「ワクチン」ですよね。

 自分はいつ打てるのだろう、と待ち構えている人、いやいや、どうせ効かないだろ、と疑う人、打ちたいけれど副反応が心配で、どうすればよいか迷っている人。いろいろだろうと思います。

 ワクチンの仕組みだとか、副反応だとか、詳しい話は長くなってしまうのでここには書けません。なので一つだけ、皆さんにどうしても伝えたいことを書いておこうと思います。

 テレビなどでワクチンの解説を聞いていると、あれこれ説明があった後で、最後に「(ワクチンを打つかどうか迷ってる人に)結局、一人一人が決めること」と言われていると思います。

考える豚 考える豚

 どう思いますか?

 「専門家でもないのに、自分で決めるなんてできない」

 そう感じる人も少なくないのではないでしょうか。

 人がどのように生きるか、それを決めるのは個人の権利です。ですから、どのような医療を受けるのか、それを最終的に決めるのも皆さん自身です。ただ、決めるに当たっては、必要な情報が十分にあること、それを皆さん自身がしっかり「理解できていること」が条件になります。

 でもこれはとてもむずかしいことです。

 そもそも専門家たちは、「本当のことはたくさんの英語の論文を読まなきゃわかりっこない」なんて言ったりしますし、専門家による一般の人向けの解説も、基本的には「打ったほうがいいですよ、打ちましょうね」という前提で書かれていると思います。

 科学的だから、信じて、まかせてと専門家たちは言います。しかし、そうすることで私たちの社会は何度も間違えてきたのではなかったでしょうか。

 日本でワクチンへの不信感が残っているのは、接種後に身体に障害が残ったり、集団接種で別の感染症を広めてしまったりしたことが理由の一つになっていると思いますが、何よりも問題が生じたときに専門家や行政が被害者に対して、寄り添うことができなかったからだと思います。被害を訴える人に対して批判的な言葉が浴びせられているときに、いったいどれだけの専門家が被害者を守る行動をとってくれたでしょうか。

 マスコミが被害ばかり強調するから・・・では決してないと思うのです。

 今のところ、ひまわりでワクチンの接種ができるようになるかどうか、まだわかりません。でも、ワクチンを打とうかどうか迷っている人には、ぜひ来ていただきたいです。時間が許す限り、一緒に考えましょう。「打つ」か「打たない」か。皆さんが自分で決められるまで。根本的な解決にはならないですけれど、それがひまわりの役割だと思っています。