2020年「コロナ」の記憶
所長 毛利 一平
新年あけましておめでとうございます。
「コロナ」に明けて、「コロナ」に暮れた2020年でした。2021年、皆さんはどのように迎えられたでしょうか。思いもかけず「新型コロナ感染症」に見舞われた方々、そのご家族には心よりお見舞い申し上げます。また、営業自粛や行動制限など新型コロナ感染症対策の影響を受けて、こころや体が、そして経済的につらい状況にある皆さん、歴史上おさまらなかった感染爆発はありません。私自身は、必ず以前の生活を取り戻せると信じています。その時まで、へっぴり腰でも前に進みましょう。
ひまわり診療所は、2021年も働く人たち、そして地域で暮らす皆さんが少しでも健康に過ごせるよう、スタッフ一同力を合わせて頑張ります。よろしくお願いいたします。
2020年を振り返ると、記憶のほとんどが新型コロナウィルスに染められていることに気付かされ、なんとも言えない気持ちになります。
人との交流が制限されたことで、帰省もままなりませんでしたね。私もゴールデンウィーク、夏休み、そしてこの年末年始と、三度の機会を逃してしまいました。岡山の実家で暮らす両親は高齢で、とても心配なのですが電話をかけることぐらいしかできません。
「コロナ」と関係はないと思うのですが、近所にあった診療所も閉鎖されてしまったそうで、持病の治療が続けられるか、急な体調不良の時に必要な医療を受けられるかどうか、新たな心配の種も増えてしまいました。
とっくの昔に限界集落を超えてしまったような地域なので、人と会うことも少なく、「コロナの心配はない」ともいうのですが、それはそれで心配です。
診察室でもいろんなことを見聞きしました。
タクシーの運転手さんたちはみな口をそろえて、仕事ががっくりと減ったと言っていました。お客をほとんど乗せることなく仕事を終えることもあると聞きました。以前は次々と雇入れ時の健康診断に来ていた外国人技能実習生が来なくなりました。ニュースで彼・彼女らの苦しい現状を知らされるたびに、胸がとても苦しくなります。舞台関係の仕事をされていた方々が、一時期次々にアスベストの除去作業に転職したと言って健診に来ていたことも覚えています。似たような仕事だから、と言っていたと思うのですが、なんとも返す言葉がなかったです。
高齢の患者さんたちでは、人と会うのを避けるようになり、外出の機会がめっきりと減ってしまった方も多かったです。「すれ違うだけで感染したりはしないから」とはいっても、ぼくの言葉ではテレビの力にはなかなか勝てません。
企業では在宅勤務が本格的に導入されるようになり、通勤時間が減ったと喜ぶ人も多かったのですが、そうしてできた時間は少なからず仕事のために使われ、期待されたほどには家庭や余暇のために使われなかったのではないでしょうか。通勤と仕事で毎日一万歩ほど歩いていた人たちが、在宅勤務で千歩、二千歩程度に減ったとも言います。健康診断の結果が昨年より悪くなっているように思います。
一方で外に目を転じてみると、「コロナ」によって私たちの社会が抱える様々な問題が一気にあぶりだされた一年でもありました。社会の動きにブレーキが掛けられ、経済的な活動が落ち込んできたことで、非正規労働者を中心に多くの人が職を失い、とりわけ弱い立場に置かれる女性では自殺者が増えています。「先進国」を名乗るのなら、もっとまともなセーフティネットを準備できたはずだろうにとも思いますが、インターネットの中からは、「もはや日本は『後進途上国』」との声すら聞こえてきます。
先進的であるとされてきた日本の医療も、案外もろかったのかなと思わされます。折しも、この原稿を書いている12月21日、日本医師会など医療関係9団体が「医療の緊急事態」を宣言しました。
いつまで続くのか、先が見えない怖さはありますが、「明けない夜はない」。せめて、自分たちが暮らす社会を足元から立て直すための、たくさんのヒントを得ることができたと、前を向きたいと思います。
さあ、2021年、ぼくは何から始めようか。
あなたは、何から始めますか?