設立30年のいま
理事長 平野 敏夫
1990年6月、地域の労働組合や住民運動団体などによる「働く者のための診療所」設立準備会の活動を経てオープンして30年になります。10月に設立30周年のイベントを開催する予定でしたが、コロナ禍のため来年に延期の予定です。
設立して20数年間、理事長兼所長であった私は医師会に入らず、労災職業病医療と地域の運動に貢献すべく運営してきました。もちろん地域の患者さんも多く受診されました。5年前毛利一平医師が所長になり、設立当初からのスタッフも退職し、それまでなかった事務長職を新設して新体制になりました。開設時から数多く通院していた、常磐炭田のじん肺被災者などの労災職業病の患者さんも大幅に減りつつありました。所長になった毛利さんは地域医療に重点を移すべく医師会に入り、区民健診、予防接種などの新たな取り組みを開始し、地域に定着してきています。
そして5年。地域の患者さんが増えてきたところで、3月からのコロナ禍です。ひまわり診療所も他の医療機関同様に4月から患者数が減っていきました。2週間毎に通院していた慢性疾患の患者さんは1~2ヶ月分の処方を希望し、待合室でのコロナ感染の不安のため電話再診の希望者が増加したのが原因です。
それに加えて苦労したのがコロナによる院内感染の予防です。色々と試行錯誤しましたが、現在は、高性能フィルター付で中が陰圧になるブースを購入し、発熱などの症状がある患者さんの診察はこのブースの中で行っています。今後冬にかけてインフルエンザとの同時流行が心配されます。どう対応するか試行錯誤が続くと思います。
地域医療に重点を移してきたとはいえ、従来の労災職業病の被災者の診療はもちろん続いています。常磐炭田のじん肺被災者の診療は人数も減り高齢化して通院が困難になってきたので、月に1回北茨城で出張診療しています。建設労働者のアスベスト関連疾患の患者さんも通院しています。また、建設労働者の労働組合と連携したアスベスト関連疾患の予防の取り組みも行っています。なかなか労災と認めてもらえない有機溶剤中毒などの患者さんも来られ、5階の東京労働安全衛生センターと連携して労災認定されるように協力しています。
新しい取り組みも始まっています。4月から看護師の提案で始まった認知症カフェです。認知症カフェは、今後増える認知症を地域で支え、症状の進行を遅らせるという目的で、厚生労働省のオレンジプランで推奨され各地に出来ており、行政からの助成があります。しかし、当事者の集まりが少ないなど運営はなかなか困難な場合も多いようです。当院に通院している患者さんを対象に少しずつ広げていきます。歌ありダンスありペットボトルをピンにしたボーリングありと色々工夫してやっています。
とにかくこれまで働く者のための診療所ということで日常診療に労災医療が占める割合が大きかったのですが、地域医療に重点を移し、スタッフの創意工夫ある活動もあり、診療所は進化しています。今後ともよろしくお願いします。