石綿小体(アスベスト小体)

 動物では肺内に吸入された石綿繊維の97〜99%が数ヶ月以内に体外に排出されるとされています。肺に残った石綿繊維を、肺のマクロファージやリンパ球等が消化や諸因子の分泌での処理を行いますが、安定的で耐酸・耐アルカリ性の石綿ですから、肺内の細胞の寿命をはるかに超えて、残存します。そうした間に、タンパク質と鉄が付着して茶色の「鉄あれい状」「団子状」「ビーズ状」の変化が、肺の内部に形成されてきます。石綿繊維を芯として、蛋白質と鉄が付着したこの物質を、石綿小体といいます。肺のプレパラートを丹念に探すと光学顕微鏡で見つかりますし、手術や解剖した肺を0.3-1グラム程度、消化や低温で灰化すると少量の場合でも光学顕微鏡で判明します。 

アスベスト小体

(写真 アスベスト小体)

 石綿(アスベスト)曝露のまさに指標ですので、重要な変化です。「かくたん」や「気管支肺胞洗浄液」でも検出される事がありますが、検出率は大変低いのが実際です。石綿の種類としては、クロシドライトやアモサイトは石綿小体をつくりやすいのですが、クリソタイルは石綿小体を形成しにくいのです。石綿布や建築のボードの多くはクリソタイル石綿ですので、職業等で石綿曝露が多くても、石綿小体がほとんど形成されないことが知られています。