ひらの亀戸ひまわり診療所
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2017年春号 第98号

亀戸7丁目で考える外国人のこと

所長 毛利一平

 1月は行く、2月は逃げる、3月は去る・・・で、 もう4月の声が聞こえてきました。早いものですね。いろいろなものが動き出すこの季節、なんとなくむずむずするのは花粉症?なんて思ったりもしますが、今年のむずむずはちょっと違う感じです。

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 毎日のように新聞・テレビで報じられるのは アメリカ・トランプ大統領の「つぶやき」。「国境に壁」だとか、「移民・難民お断り」だとか、 心がざわつく言葉ばかりが続きます。そうか、 だから今年のむずむずはちょっと違うんだ。

 とても気になるのは、アメリカだけでなく、 日本でも、ヨーロッパでも、世界中でこんな言葉が勢いを増していることです。とりわけ日本では、ずっと移民・難民の受け入れに対して、 到底先進国ではありえないような厳しい態度をとってきたにもかかわらず、ネットなどでは、日本で厳しい環境に置かれてつらい思いをしている外国人たちに対して、「帰れ!」、「自業自得」なんて言葉が並びます。

 シリア難民たちに向けられた、こんな言葉も目にしました。「逃げないで戦え!(難民になろうなんて考えるな)」。小さな子供だって、その子どもたちを守りたい一心の大人だって、体が思うように動かないお年寄りだっているはずなのに、どうしてこんな言葉を投げることができるのか、私には理解できません。

 日本で働く外国人たちへの冷たい言葉もよく聞こえてきます。でもそうした言葉を投げる人たちのうち、いったいどれだけの人が外国人労働者の置かれた状況を知っているのでしょうか。

 先日、診療所を訪ねてきた外国人技能実習生の若者は、毎日16時間以上も働かされ、疲弊しきっていました。技能「実習」とは名ばかりで、奴隷にも近い状態です。同じ条件で働き続けられる日本人など絶対にいない。実習生たちが働くのは、少なからずそんな職場なのです。

 彼らもまた、デフレ時代の日本の基盤を支えていることを、みんなもっと知っておくべきだと思います。

 僕らより若い世代の人は、あまり知らないかもしれませんが、日本もかつては移民の送り出し国でした。ブラジルへの船による最後の集団移住は1973年。ほんの44年前(僕は12才!) のことです。僕の祖父の兄弟二人も口減らしのため、戦前サンフランシスコとハワイへ移民として渡り、二度と日本に帰ることなく現地で生涯を終えています。

 人間の社会に国境が生まれる前から、人は移動してきました。理由は様々でしょうが、移動することで個々の人生がより豊かになり、社会としてもより強くなってきたのだと思います。 摩擦を生みだし、争いの原因となってしまうのは、何か間違っているんじゃないか、そう思います。

 「ひまわり」は亀戸7丁目の隅っこにある小さな診療所ですが、言葉や肌の色に関係なく、だれでも気軽に立ち寄ってもらえる医療機関でありたいと願っています。そしてそうあり続けることが、外国人にも優しい社会づくりに貢 献できることだと信じています。

Think globally, act locally.
(地球のことを考えて、地域で役割を果たす)

 -トランプさん、負けませんよ!

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