ひらの亀戸ひまわり診療所
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2015年秋号 第92号

10月1日から始まる医療事故調査制度

MSW 高山俊雄

 医療事故は昔から耳にしてきました。国もいろいろと施策を行ってきたのでしょうが、依然、少なくなっている様には見えません。

 そこで、昨年国会で死亡事故のみ報告が義務づけられることになったのが「医療事故調査制度」です。その実施が今年10月1日からというわけです。但し、報告の義務があるのは、想定された死亡に関してはその必要はありません。

 あくまで想定外の死亡に関してということです。それは、当院のような診療所に対しても義務は課せられます。義務の内容は、万一想定外の死亡事故が発生した場合、直ちに院内に原因を究明するための「事故調査委員会」を立ち上げます。そこでの議論を報告書という形で作り、国立ではない民間の第三者委員会である「医療事故調査・支援センター」に報告しなければなりません。つまりこの法律は、労災事故のように国による制度とは異なり、最初から民間ベースで作られた法律なのです。

 問題の一つはある治療行為によって亡くなった場合、医療機関が「事故」だと判断した場合に限り、院内の事故調査委員会が立ち上るシステムにあります。つまり、医療機関が事故だと判断しない限り、この調査制度に乗らないのです。ご遺族がどんなに「事故」だと感じていてもそれを訴える場所ではありません。結局、それは裁判にならざるを得ないのです。

 二番目は仮に事故と認めて医療機関が調査した結果を「支援センター」に報告しますが、遺族には報告書を渡すことが義務づけられていないのです。口頭でも、要約版でもよいのです。これらのことから、被害者からは誰のための制度かと今から疑問視されています。

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