ひらの亀戸ひまわり診療所
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2013年10月 第84号

縄文遺跡

富永純枝

「ストーンサークル」をご存知ですか? 石を円形に配置した古代の遺跡のことで環状列石とも言われています。有名なところではイギリスにある巨大な石を使ったストーンヘンジがあります。名前は聞いたことがあっても詳しいことは知らなかったのですが、先日実物を見てきました。場所はイギリスではなく、青森県。日本でも北東北から北海道にかけて縄文時代の遺跡が数多くあります。訪れたのは有名な三内丸山遺跡から少し離れた所にある小牧野遺跡。誰も通らない鬱蒼とした森の中の砂利道を半ば不安になりながら抜けると、見晴らしのいい丘に出ます。テーマパークのように整備された三内丸山遺跡と違って、こちらはプレハブ小屋のミニ資料室しかありません。これから建物などを建設するようで工事の方の姿は見えるものの、夏休み時期にも関わらず訪問者は私たちだけのようです。駐車場らしきものも見当たらないのでとりあえずプレハブの前に車を止めました。小屋の中を覗くと学芸員?の方がおられ、古代の人々の生活の様子を目を輝かせながらお話してくださいました。

 この遺跡の特徴は細長い石を立て横に並べる独特の組み方で、外側直径35m、内側29m、の大きな二重の石でできた円の中に直径2.05mの小さな円があります。この広場の中で祭祀が行われていたと考えられており、周りから見るとまるで円形劇場のようです。一つの石は平均約10kgほどで、2900個が500m~1km離れた荒川から運ばれたそうです。

 広場の側には2軒の竪穴式住居跡や土抗墓、捨て場跡などがあります。ここでは人が亡くなると最初に土葬をして数年後に骨だけを取り出し、つぼのような土器にうつしかえる再葬が行われていたそうです。

 この遺跡は山の斜面を削って平らにして作られています。その周辺には始めから平らな場所もあるのになぜそこにしたのか? おそらく、祭祀に使われていたため、それを司る巫女のような人が最もパワーのある場所に決めたのではないかとのことでした。周囲にはくるみやクリ、ドングリの木が繁っていて、斜面からは町並みや陸奥湾、石を運んだ荒川が一望できます。image

 一周しても15分とかからない場所ですが、なぜかぼーっと落ち着いてしまいます。この遺跡を眺めながら4000年前の人々はどんな暮らしをしていただろうと思いを馳せました。科学が今ほど発達していない時代、祭祀が政治や医療の役割をも果たしたていたのでしょうか。災害や病気などに直面したとき、人智には及ばない自然の力を怖れ敬う気持ちは今も昔も変わらないのかもしれません。発掘物は青森市の博物館に展示されているそうで今回は見ることができませんでしたが、この場にいるだけでなんとなく縄文の時代にスリップしたような気分になり、さわやかな気持ちで遺跡を後にしました。

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