ひらの亀戸ひまわり診療所
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2012年10月 第80号

震災がれきのアスベスト

ひまわり診療所理事長 平野敏夫

 今年に入って、東日本大震災の被災地である石巻市と女川町に行く機会がありました。私が代表理事をしているNPO東京労働安全衛生センターが、独立行政法人環境再生保全機構の地球環境基金の助成を受けて取り組んだ、震災がれきのアスベスト調査活動に参加したのです。
 アスベストは発がん物質で肺がんや中皮腫(肺の胸膜などにできるがん)などの重篤な病気を引き起こします。2004年に建材などへの使用は禁止されましたが、これまでに輸入されたアスベストは約1000万トンに上りその8割以上が建材に使われました。地震では多くの建物が倒壊し建材に含まれるアスベストが飛散します。1995年の阪神淡路大震災では、震災後の解体工事に従事した作業者やがれきの処理にあたった明石市の職員が中皮腫になっています。石巻や女川でこのような被害が起こらないように、空気中のアスベスト濃度を測定し、半倒壊した建物のアスベスト調査をしてその結果を市民や行政に報告しともに対策を立てるのが目的です。調査結果は、空気中のアスベスト濃度は直ちに対策を講じなければならないほどの濃度ではありませんでしたが、半倒壊の建物に吹き付けアスベストがあり解体時に対策が必要な個所がありました。センターではこの調査結果を報告し、解体時にアスベストが飛散しないように建築業者に対して特別教育や研修を行いました。その際にアスベストがどのような健康障害を引き起こすかについてお話をするのが私の役目でした。picture
 石巻も女川も初めて行きました。どちらの町でも高台に上って見たのですが、すでに震災から1年経っているのでがれきなどは片付けられており平地になっていましたが、ところどころに半倒壊の建物が残っています。女川では横倒しになったビルがそのまま残っていて津波のすさまじさを実感しました。私は島根県の海の近くで生まれたので、海が好きで海岸に行くと何となくほっとします。石巻も女川も静かできれいな海でした。とてもあの恐ろしい津波が襲ってくるなど想像できない穏やかな海でした。少しずつ復興に向かっているようでしたが、まだ大きながれきの山が残っておりこれから長い道のりがあると思います。海を見ながら、がれき処理や解体作業で健康被害が出ないように少しでも協力できればとの思いを強くしました。

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