ひらの亀戸ひまわり診療所
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2011年10月31日 第76号

福島の子どもたちを守ろう

理事長 平野敏夫

 3月11日に東日本大震災が発生し、その後東京電力福島第一原子力発電所で爆発が起きて7ヶ月になります。原発から広範囲に広がった放射能が大きな問題になっており、事故の収束もなかなか目途が立ちません。福島県の緊急避難の指定になっている地域の住民は避難していますが、指定されていない福島市では1マイクロシーベルト前後の放射線量が毎日観測されているにもかかわらず避難できずに多くの方が住んでいます。放射能は人間の細胞を傷つけ白血病などのがんや遺伝の障害を起こします。特に子供は細胞の発達が活発で影響を受けやすく甲状腺がんの発症が心配されています。放射線には、これ以下なら健康に影響はない量(閾値(しきいち))はないと言われていて出来るだけ浴びないことが重要です。

 福島市の放射線量は決して安心できるものではありません。避難している子供もいますが、まだ多くの子供が避難できずに住んでいます。心配されている親たちが、「こどもたちを放射能から守る福島ネットワーク」を結成して様々な活動を展開しています。その活動の一環として福島市で子供たちの健康相談会を開催しています。「子どもたちを放射能から守る全国小児科医ネットワーク」(代表 八王子中央診療所 山田真)が6月に結成されてこれまで4回の健康相談会が開催されました。私は小児科医ではないのですが代表の山田さんから要請があって2回参加しました。

 4回目の相談会は9月23日に開催されました。福島市では「市民放射能測定所」が立ち上がっていて、市民の力で、内部被曝(体内に取り込んだ放射能)を測定するホールボディーカウンターと言う器械が導入されています。当日はこのホールボディーカウンターで内部被曝を測定後に相談が行われ58名の子供が参加しました。内部被曝の量では問題になる子供はいませんでしたが、私が相談を受けた子供の状況は非常に厳しいものでした。とにかく震災以降は外でほとんど遊んでいません。外に出るのは通学の往復だけで、学校の体育も体育館です。週末に車で山形県に行き遊んで帰ってくる家族もありました。また、雨どいや屋根に堆積した泥などからの放射線で部屋の中でも1マイクロシーベルトの放射線量があるので困っているというお母さんもいました。この夏にしばらく出なかった喘息がひどくなった子供もいました。放射線の影響というより外で遊べないなどのストレスが関係しているかもしれません。いったん事故を起こすと取り返しがつかなくなる原発は一切廃止してほしいと強く話されたお母さんもいました。

 今後これ以上の放射線被曝をさせないことが最も重要です。また、今後数年後から出るかもしれない甲状腺の障害などのチェックをきちんと行うことも重要です。私たちがどれほどのことが出来るかわかりませんが、少しでも出来ることがあれば協力していきたいと思っています。

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