ひらの亀戸ひまわり診療所
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2011年7月20日 第75号

放射能

理事長 平野敏夫

 3月11日の大震災以降、シーベルト、ベクレルという今まで聞いたことがない用語が毎日のようにテレビや新聞の紙面に出てきます。ベクレルは放射能の単位、シーベルトは放射能が人体に影響を与える指標単位です。福島第一原子力発電所の事故で、放射能が広範囲に飛散して、原発に近い浪江町や富岡町、飯館村などの住民は避難を余儀なくされ、遠く静岡のお茶からも放射能が検出されるという深刻な事態になっています。収束のめども立っていません。東京でも江東区、江戸川区、葛飾区などの東部地域で高めの放射線が測定されています。放射能は、一度に多量を浴びると急性の障害が起きますが、少量を一定の期間浴びると白血病などのがんを引き起こします。しかも、目に見えない、匂いもない、放射能が半分になるのに30年、ものによっては何万年もかかるという厄介な代物です。

 診療所には過去に建設現場でアスベストを吸入し、アスベスト肺や肺がんになった患者さんが通院しています。アスベストも発がん物質で、吸入して20年、30年後に肺がんや中皮腫というがんを引き起こします。「静かな時限爆弾」とも言われています。アスベストは断熱、防音効果に優れ、しかも安価ということで、国は建材などに使うことを奨励してきました。「注意して使えば安全」というわけです。原子力発電とまったく同じ論理です。

 今、福島第一原発で高い放射線に曝露されながら多くの労働者が働いています。原発周辺の住民も比較的高い放射線に曝露しています。福島市や郡山市などやや離れた場所でも放射線が検出されています。今後10年、20年後に不幸にして健康被害が出ることも考えられます。先日、福島市で子供たちの健康被害を心配する人たちの健康相談会に参加しました。皆さん、将来の子供さんの健康被害が心配で避難したいが避難できない厳しい状況を口々に訴えておられました。また、別の団体からは原発で働いている労働者からの相談を受け付ける運動への協力要請もありました。

 診療所の新たな課題(できることは小さいと思いますが)が増えました。健康被害が20年、30年後になることを考えるとひまわり診療所がそれまで続いていなくてはなりません。次世代の若い力の必要性を痛感する今日この頃です。

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