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ひまわり診療所では、健診を行う機会が増えている。そうした健診は、診療時間に行なわれるものもあるが、中には朝早く8時から開始したり、9時から開始したりする場合もある。又、日曜日に行われる場合もあり、職員は休み返上で従事することとなる。 さて、私はこうした健診では聴力検査を担当することが多い。この検査を始めたころはあまりよく分らなかったが、何回か経験する中で、いろいろなことが分ってきた。分ってきたというのは、労働現場の労働環境である。皆さんのカルテにはここ数年の検査結果が書かれてある。それを見ると、かなり聴力が弱くなっている、言い換えれば聞こえづらくなっている方がいる。その聞こえづらさも、低音は全く正常であるのに、高音の検査音が聞き取れなくなっている。いわゆる「騒音性難聴」の状態なのである。職業では、大工さんなどは、本人が操作する電気ノコギリの音などが原因と考えられるが、音と関係が無いと思われる左官屋さんなどでも騒音性難聴と思われる方に出会うことがある。こうした難聴になられる皆さんは、長い間無防備に周囲の騒音をそのまま生身の体で受け止めてきたことが原因している。 あるとき、年配の女性の方が難聴になっているのを確認して伺ってみた。「どんな労働現場で働かれていたのですか-」と。すると、その方は「いいえ、そうしたところで働いたことはありません。ただ、数年前から夫の耳が遠くなり、テレビの音量を上げるんです。私も一緒にテレビを見ているので、私もどうも難聴になってしまったように思うんです。難聴ってうつるんですか-」と逆に聞き返された。このとき私は夫が騒音性難聴になることは、連れ合いの方まで巻き込まれる場合があることを知るところとなった。それまで難聴は、治療の方法が無いので、予防することが大切ですと話してきた私は、この話に何とアドバイスすればよいのか困ってしまったのである。ただ、高齢による難聴の場合も、高音から聞こえなくなるということなので一概には言えないものの、テレビを一人ひとりが購入して観ることを勧める事も出来ず、未だに結論が出ていない。ただ、テレビのイヤホーンで聞くことが出来る人と、外部にも音が出、外の音は外でコントロールして他のご家族が聞くことが出来るツーウエイ方式のテレビが出来れば、この問題は解決するのではないかと、一人ごちている。 あるとき、70代の男性の検査をしたところ、大工さんであるというには、ほぼ正常の聴力であることに気づきお話を伺いたいと思った。うかがう中で分ったことは、40代頃から「耳栓」をされていたということであった。ご自分でも耳栓の効果がこれほどまでにあるとは思わなかったと言い、驚かれていた。 耳栓の効果がこれほどのものなら、組合の方も、もっと積極的にPRしていただければと思えてならなかった。 |