ひらの亀戸ひまわり診療所

ひまわり診療所 所長 平野敏夫

 マーチ・イン・マーチとは、外国人労働者のためのいわば「春闘」に向けたイベントです。日本では毎年3月になると「春闘」ということで労働組合が来年度の賃上げなどについて経営者と交渉をします。一昔前にはあちこちでストライキがあったものですが、最近はめったに見られなくなりました。

いまや多くの外国人労働者が日本で働いています。いわゆる3K職場(きつい、きたない、危険な職場)で、しかも派遣など「非正規労働者」として働いているのです。3月7日、あいにく寒い雨の日でしたが、日比谷小音楽堂で約100名の外国人労働者が集まり歌、楽器演奏や踊りで盛り上がりました。フィリピン、バングラデシュ、パキスタン、中国、韓国、アフリカからはガーナやセネガル、南米からはブラジルとペルー、日本からもアイヌの人達が参加しました。

 ひまわり診療所にも多くの外国人労働者が通院しています。このイベントにも参加する外国人が多くいることもあり応援のつもりで出かけました。冷たい雨の中でしたが、それぞれお国の歌や楽器演奏を披露し、ブラジルのサンバなどの踊りも加わって大いに盛り上がりました。最後には「We are the world」を全員で合唱し、国境を超えて団結し、多文化・多民族が共生する社会を目指そうと気勢を上げました。

 神奈川から参加した労働組合のペルー人たちがヨドバシカメラのCMソングの替え歌を作って壇上で歌っていました。「○○○の車のカーライト、みんなラテンが作ってる…・」、「コンビニエンスの弁当は、みんなラテンが作ってる…」。そうなんです。自動車の部品やコンビニ弁当を作る工場では多くの外国人労働者が、派遣や契約などの不安定な「非正規労働者」として働いているのです。ひまわり診療所に通院している外国人労働者の中にも、長時間労働で働かされ残業手当も出ない、夜勤専門で働かされている、健康保険も有給休暇もないなど厳しい労働条件で働いて健康を害している人が多くいます。中には仕事中に怪我をしたり腰痛になったりして労災保険で治療している労働者もいます。更に外国人ということで差別扱いされることもあります。そして、景気が悪くなると簡単に首を切られるのです。「春闘」でこのような状況を変えて人権を守ろうというのがマーチ・イン・マーチの趣旨なのです。

 もはや日本も多くの外国人が働き、多文化・多民族共生の時代に入っています。外国人に対して差別的な労働条件・環境で働かせるなどもってのほかです。彼らの運動を応援するとともに私たち日本人の生き方、働き方も考えていく必要があるでしょう。皆さんも待合室でちょっと交流をしてみてはどうでしょう。

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