ひらの亀戸ひまわり診療所

A.S

『ピー、ピー、ピー』

 診療所内にいて、一番怖い事は、この音である。

 警報機をかけた時に鳴る音。私が居ることに気が付かず、スイッチを誰かが入れたのだ。

 初めてのときは、なんの音だかすぐには分からなかった。ひとり残っていたので、用心の為に玄関に鍵を掛けていた。待合室の電気は付けていたので不在ではないのはわかるはず。黙々と仕事をしていると、玄関の鍵を開けたような音がする。

(誰かが戻っていたのかな?)

 鍵を持っているということは、関係者しかいないので見に行かなかった。と、突然…『ピー、ピー、ピー』

 あの音である。

(何か鳴っている…)

 5秒後、(警報機の音だ!!)

 部屋を飛び出した。時は遅し。掛けた人の帰る後ろ姿が見えた。

 でもその時は、軽く(中から解除をすればいいや)、と思っていた。が、それは甘かった。ロッカーに鍵を取りに行こうと動いたら、

『ピ、ピ、ピ、ピ、ピ!』

警報機が作動した。ビックリした。ショックだった。

(あー、セ○ムの人が来ちゃう…)

 かなり、長い時間鳴り響いていた。

 その時、電話が鳴った。セ○ムかな?と思ったが、取るか取らないか迷っていたら留守電に切り替わった。

 5分後、セ○ムの方が恐る恐る(泥棒が居たらこわいもんね)玄関から入ってきた。

「ごめんなさ〜い!!」

 開口一番、謝りました。セ○ムの方も職員らしき人が出てきて、ほっとした感じだった。

 事情を聞かれ、警報機の赤ランプを消してもらい、戻ってもらった。ご苦労様でした。

 と、この話はかなり前の出来事。が、先日また、あの音が…。

『ピー、ピー、ピー』

(えっっっ!!)

すぐ、何の音かわかった。

(誰?)

部屋から出、玄関を見た。鍵を掛けている。駆け寄ろうとしたが、間に合わないかも…、と思い部屋に戻った。下手に動くとまた作動する。

(どうしよう。)

 20分後には平野先生が4階で会議をするので戻る、と言っていたことを思い出した。でも、他のメンバーのことは聞いていない。一瞬、平野先生が携帯を持っていないことを恨んだりして…。あれやこれや、考えたがこの方法しか、考えつかない。

(電話をしよう…。)

 セ○ムの報告書がどっかにあったはず。見つかったので、電話を掛けたら、「この電話は現在使われておりません。」

(まさか…。)

 真っ黒な気持ちになった。あの絶望感。

 気を取り直して、 もう一枚探したら下一桁が違うナンバーが書いてあった。

(良かった〜。)

 今度は電話が掛かった。連絡を取り合って、今度は来てもらわずに解除をした。

 バンザイ!! で、事なきを得たのだが、カードキーを取りに行くときはやはり、『ピ、ピ、ピ、ピッ』と、鳴らした。犯罪者になった気分をちょっと味わった。今年(2010年)は三回目がないことを祈りたい。

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