ひらの亀戸ひまわり診療所

高山俊雄

 連れ合いと共に文京区にある病院に行った帰り道、ぶらぶら歩いていると、シューヒッターの免状が道路から見えるところに飾ってある店にぶつかった。ともあれ冷やかしで入ることにした。関心が高かったのは、私より連れ合いであった。彼女は足の変形に悩んでいた。店に入ってシューヒッターの方の話を伺っていると、徐々にこの店の考え方が分かってきた。普通、靴屋に行くと、足の変形に合わせて靴をオーダーメイドすることが多い。だから値段も高い。しかしここの店は、中敷を調節する方法を取る。既に癖がついてしまった足の形。それを矯正することから始めるというのだ。最初に左右の靴の裏を見、靴の減る箇所と減り具合を見る。それでとりあえず矯正のために中敷の裏を細工する。細工の後、実際に履いてみて、痛い箇所を聞き、痛みが出ないように更に調節する。何度かの調節の後、「これでとりあえず履いてみてください」と渡されるのである。

 驚いたことに、この店には沢山の中敷が誰履くこともなく、山積みになっていた。聞けば、足の悩みを持つ人は多く、この種の本に宣伝されている都内の医療機関に受診し、御用達の義肢装具店で作ってもらったものが多いという。高いお金をかけて作ったものの、一気にアーチを作ろうとするものだから、痛くて履くことができず、この方法を諦める。諦めた後にこのような店を見つけ、この店での中敷を作った後、置いていったものだという。通常患者さんたちは、これらお金を健康保険に診断書と領収書を添えて請求し、7割を取り戻す。放置されている中敷は無駄な医療費の山ということになる。民主党政権は、こんな無駄使いまでは見落としているのではないか。

 さて私自身のことである。私は高校生の頃から一貫して靴の大きさが25.5であった。だから48年くらい、この大きさの靴を履いてきたことになる。ところが、この店の主人が、私の靴を脱いだ足を見て、直ぐに「お客さんの足の大きさは24.5ですね」といったのである。私はそんなことはないと思い、24.5の中敷を持ってきてもらい,合わせて見た。するとどうだろう、その中敷の中に足がすっぽりと入ってしまったのであった。私は驚いた。私はそんなプロの目に幻惑され、この店で靴を一足買ってしまった。衝動買いであったかもしれない。ただ、この靴は私の足にぴったりで、ちょっとした外出の時に使っていて心地良い。

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