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7月13日、既に衆議院で、法改正案が成立していましたが、この日参議院でも賛成多数で可決された「脳死・臓器移植法改正案」。この法律改正が何をもたらすのか、考えてみたいと思います。 これまでの法律では、「脳死」というのは、心臓が止まったわけではなく、呼吸が止まったわけでなく、脈も打っている状態であるので、人が死んだ状態とは考えないとしてきました。その代わりに、その状態から臓器を摘出し、移植するという場合のみ、「人間の死」と考える、というものでした。何故そんな面倒なルールにしたかといえば、そのようにしないと、生きている人間から臓器を取り出すことになりますので、『殺人』ということになってしまうからです。 今回改正された法律では、「脳死」と判定されれば、そのまま「人間の死」だと法律として決めたということです。もう一つの変更は、これまでの法律では、臓器提供者の年齢を制限し、15歳以上の人だけが移植に対し臓器提供できるとしていました。この年齢制限を取り払ってしまったのです。この年齢制限撤廃の裏には、国連のWHOの動きに便乗したと思える部分があります。WHOは臓器移植が他国で行なわれる中に、臓器売買組織が介在しているとして、これを阻止する目的で、移植目的の海外渡航禁止を打ち出しました。しかし、今年の新型インフルエンザ流行の為、各国がこれに充分な人手を割けないとしてWHOはこの方針を取り下げたのです。 最後の変更点は、このように「脳死」と判定された場合、本人の臓器提供意志の有無に関わりなく、家族の希望で臓器の提供がされてしまうことになったという点です。 さてこの法案成立によって、今後どのようなことが問題になるでしょうか。 問題点の一つは、小児の脳死判定です。現在の大人の判定基準と同じで良いのかどうかが、一番大きな問題です。と言いますのも、これまでも脳死と判定された子供たちの中に、1ヶ月以上生存している場合が多く報告されているという点です。中には1年近く生き続けたりするいわゆる「長期脳死」の存在です。このことは、大人とはことなる判定基準の必要性を求めていると思えます。 もう一つ、自分の意志と関係なく、家族が臓器提供を決めるというのは、家族関係が悪かったりするとどうなるでしょうか? 少しは良いことをした方が良いなどと家族に決められたら、たまったものではありません。これは家族による殺人と言えないでしょうか。 今回の法案成立で、脳死判定そのものを拒否する運動が必要だとする意見があります。いわゆる「ノンドナーカード」(臓器提供を希望しない意思表示カード)を持とうという運動です。あくまで本人の意思表示を大事にすべきとする具体的な運動です。注目したいと思います。 |