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今年の4月からスタートするという後期高齢者医療制度。既に昨秋号に院長挨拶で触れていますが、一体この制度はこれまでの保険制度とどのように違うのでしょうか。まず国は同じ高齢者でも、65歳以上から74歳未満までの方を「前期高齢者」。75歳以上の方を「後期高齢者」と言っています。この区分けが何を根拠にしたものか分かりません。ただ今回の新しい制度は、この75歳以上の方だけを対象にしたものです。今年4月からスタートする予定のこの制度は、この年齢になると、それまで持っていた健康保険から脱退し、新たにこの制度独自の保険証を持つことになります。このことが第一に従来と違う点です。 第二に、保険証は大体市区町村を保険者として発行してもらっていましたが、独自の保険証は広域な地域(都道府県を一つの単位にする)を一つの保険者と考えて発行されるようになります。しかもその保険料は、従来とは異なり、年金月額15,000円以上の方は、介護保険料と同時に年金から自動的に天引きされます。もし、保険料を1年間滞納した場合、保険証は使えなくなり、資格証明書が送られてきます。これは病院の窓口に出すものではなく、いったん全額を病院に支払い、あとで保険分を返してもらうための証明書です。ただ、保険料を支払えなかった人に、治療費の全額を立て替えさせることが、現実的対応であるのかどうか。日本の社会保障制度はここまで落ちたのかと思わせます。 第三に、これからは自分を治療してくれる先生を主治医として一人見つけなければなりません。従来は、勝手にかかりたい病院や診療所に行って、診てもらっていました。この自由にかかれるというのが、日本の保険制度の最も良い点であったのです。ところが、これがいけないというのです。あちこちかかると、それぞれ同じ検査や同じ薬が出されることも考えられます。そうすると、それだけでも、相当な医療費の無駄使いになるというのです。このため、主治医を決め、別な医療機関にかかる場合は、主治医の許可を必要とするような制度にしようというのです。ただし、どのような手続きで別な医師にかかれるのか、あるいは、別な科の医師にかかるのなら、問題なくかかれるのか、そのあたりがいまだはっきりしていません。 第四に主治医を決めても、どのような検査をやっても、どのような薬が出ても、病院が保険からもらえるお金は、決められた金額しかもらえなくなります。このことを「包括医療制度」と言っています。このことによって、必要な検査や治療が行われなくなる可能性があります。 こうした75歳以上の人だけを対象にした制度は、何故行なわれようとしているのでしょうか。これは明らかに医療費削減を意図したものです。言い換えれば、治療の制限であり、医療機関への締め付けです。高齢者は、これまでの日本を支えてきた方々です。そうした方々に恩を仇で返すようなやり方はどうしても承服できません。 |