ひらの亀戸ひまわり診療所

ひまわり診療所 所長 平野敏夫

 今年は暖冬のせいかインフルエンザの流行が遅く、2月下旬からぼちぼち流行って来ています。インフルエンザの診療はここ数年様変わりして、検査キットが開発されて、綿棒を鼻の奥までつっこんで鼻汁などを採取してインフルエンザのウイルスの有無を検出することができるようになりました。この検査でインフルエンザであることが判明すれば、タミフルというインフルエンザウイルスの増殖を抑える薬を飲むと、症状が軽く早めに治るとされています。しかし、タミフルには重大な副作用があることが疑われています。昨年も指摘されていましたが、タミフルを飲むと意識障害や異常行動などの精神神経症状を起こすと言うのです。アメリカでも症例報告がされていて以前から問題になっていたのですが、日本の厚生労働省は否定しており日本では広く使われています。

 昨年は早い時期に新聞などでこの副作用が報道され問題になっていたので、診療所を受診する患者さんは、インフルエンザと診断されてもタミフルは飲みたくないという方が多かったのですが、今年は流行し始めの頃はタミフルを希望される患者さんがほとんどでした。ところが、ベランダから転落死した中二の女の子がタミフルを飲んでいたという報道がされ、タミフルの副作用が疑われるようになると(厚生労働省は因果関係を否定しています)、当然のことですが皆さんタミフルは拒否されます。もともと私は積極的には勧めていなかったのですが、あらためてマスコミの威力を知った次第です。

 薬の副作用はタミフルに限ったものではありません。鎮痛剤で胃炎や胃潰瘍になることがあるのはよく知られていますし、薬疹といって薬のアレルギーで全身に発疹が出たり、肝臓や腎臓に障害が出ることもあります。すべての薬には多かれ少なかれ副作用があるのです。過去にも、大きな薬害事件として下痢止めに使われたキノホルムによるスモン病、サリドマイド禍などがあります。又、最近では抗生物質の使いすぎで抗生物質が効かない細菌が出てきて大きな問題になっています。「くすりはリスク(危険)」などと語呂合わせで言われることもありますが、薬は諸刃の刃といえます。

 過剰に副作用を恐れてはいけませんが、必要最少量にとどめるのが原則でしょう。

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