ひらの亀戸ひまわり診療所

ひまわり診療所 理事長 平野敏夫

 最近外国人の患者さんが激減しています。ひまわり診療所は健康保険がない外国人でもリーズナブルな料金で診療することと、危険な職場で労災に会うことの多い外国人労働者の治療や労災相談にも乗るということで外国人の患者さんが受診しています。数年前の多い時期には毎月延べで100人くらい受診していました。ところが1-2年前から受診者が激減し、最近では半分以下になっています。2月に行った健康診断を受けられない外国人を対象にした毎年恒例の健康診断も11人しか受診されませんでした。どうしてかと言うと、東京都による超過滞在(オーバーステイ)の外国人に対する取締りが厳しくなったからです。駅や路上で警察や出入国管理局の職員による摘発で国に強制送還されるのです。ひまわり診療所の患者さんも数人入国管理局に収容されその後強制送還されました。中にはやむを得ず治療を中断したり収容所から診察に来られた方もいます。診察の際入管の職員が4人くらいついて来て診察室に入ろうとしたので、患者さんのプライバシー保護のため入室を拒否し少しもめたこともありました。

 取り締まり強化の理由は、外国人の犯罪が増えている、特に不法に入国し滞在している外国人が問題だということです。石原都知事は、「凶悪犯罪を犯しているのは全部三国人だ」などと言っています。果たしてそんなに外国人の犯罪は多いのでしょうか?当然日本人も外国人も犯罪を犯すわけですが、2003年の統計では日本全体の刑法犯検挙数のうち来日外国人の占める率は2.3%に過ぎません。1993年が2.4%ですからむしろ減っています。犯罪者率も日本人の半分以下です。外国人が犯罪を犯すとマスコミがすぐ取り上げる傾向があります。少し古いデータですが、1998年の日本人の犯罪検挙者のうち新聞報道されたのが1.49%にたいし、来日外国人は7.25%となっており、外国人の犯罪がオーバーに取り扱われて、あたかも外国人の犯罪が増えているような印象を与えているのです。先日も職務質問をされた日本人がアジア系の外国人と間違えられ拘束されるという事件がありました。アジア系の外国人を見ると「不法滞在」や犯罪と結びつける警察の予断と偏見には憤りを感じます。

 ビザが切れて長期滞在になっている外国人は「不法な」滞在をしていることになりますが、ほとんどの外国人は日本人が働かないいわゆる「3K」職場で真面目に働き所得税も払っています。むしろ低賃金で過酷な長時間労働を強いられている場合もあり、まさに日本人の経営者が労働基準法違反をしていることもあるのです。外国人の中には日本に来て長くなる方も増えていて結婚して子供がいる方もいます。職場によっては外国人労働者を抜きには成り立たないところもあります。「不法」という前にそのような実態が進んでいるのです。であれば外国人を追い出すのではなく、お互いの文化を尊重しながらともに暮らし交流するほうが日本人にとってもより豊かな社会になると思います。少なくとも職場や地域における外国人の人権は守られねばなりません。取り締まりを恐れてひまわり診療所に受診できないようなことがあってはならないのです。

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