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医療保険の財政悪化を食い止めようと、政府の「規制改革・民間開放推進会議」は、混合診療によって保険負担分を少なくしようという、それなりに理由のある動きをしているように見えます。この動きは、医療保険の悪化を改善するため、厚生労働省がこれまで、入院の食事代の自己負担、付添婦さんの廃止、介護保険の創設による医療保険の一部肩代わりなどを行ったものの、期待したほどの成果があがらなかったことを踏まえて出されてきたと考えられます。が、ここで面白いのは、医療保険負担を少なくすることでは、賛成するはずの厚生労働省と、この「推進会議」の意見が一致せず、この原稿を書いている12月半ばにおいても論争が続いていることです。では、そもそも混合診療というのはどのようなものなのでしょうか。 分かりやすく言えば、一つの診療の中に健康保険が適用されるものと、適用されないものが混じった診療ということです。具体的に言えば、日本の健康保険では認められていないけれども外国では認められている抗がん剤と日本の保険で認められている抗がん剤を一緒に処方される、といったことです。ではこうした動きに反対している厚生労働省の言い分はどこにあるのでしょうか。大きく分けて二つの問題点が指摘されています。一つは、何の歯止めもなく保険が効かない自由診療の部分を導入すると、自由診療部分がどんどん一人歩きして、ある治療はお金がある人しか診てもらえなくなる可能性があるという点です。このことは、日本の大きな柱である社会保障制度(健康保険制度)が崩れていくことを意味すると言うのです。もう一つは、薬や医療技術に対する有効性、安全性の問題です。現在の保険制度では、保険が適用されるには、かなりの動物などの実験を繰り返し、その副作用や適用範囲、投薬量に関するデータを出さなければなりません。その上で、有効性、安全性が確認されたものが健康保険の適用になっています。診療の中に健康保険が適用されないという部分があるということは、患者さんにとってそうした有効性や安全性に対する不安な部分を抱え込むことになります。ではどうすべきなのでしょうか。 厚生労働省は、「推進会議」にたいして「特定療養費制度」の拡充で対応可能なので、混合診療の必要はないといっています。特定療養費制度というのは、自費診療部分のことです。この制度は、ただ、自費にしているのでなく、審議会にかけてこれは自費にしようという審議があって決めています。このことから現在は、管理された混合診療をやっているともいえます。今後、この動きは小泉総理大臣の決断にかかってくるかもしれません。ともあれ、自分たちの医療のあり方です。動きを注目していきましょう。 |