ひらの亀戸ひまわり診療所
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2016年春号 第94号

スラジュさん事件

事務員 山形

 2010年3月22日、ガーナ国籍男性のアブバカールアウドゥ スラジュさんが超過滞在で収容先から国費送還中に亡くなりました。スラジュさんは1988年に来日して翌年からは奥様と一緒に住んでいました。

 何故、スラジュさんは亡くなってしまったのでしょうか。何故、スラジュさんは人生最後の時を手錠・足錠をかけられタオルで猿ぐつわをかまされ拘束されなければならなかったのでしょうか。

 事件当日、収容先からガーナヘの送還をはじめて伝えられ入国管理局職員によって強制的にエジプト航空へ搭乗(その際、入管職員がスラジュさんに対し手錠、足錠と職員の私物のプラスチックバンド、タオルを使い強引に搭乗させ、さらに体を前に畳むよう押さえつけた)

 機内でスラジュさんがぐったりしたのをエジプト航空乗務員が見て搭乗拒否。入管の車で成田空港内のクリニックへ搬送、その後死亡が確認。3月25日に司法解剖され死因は不明とされ、5月20日付で千葉警察に鑑定書がくる。「臓器について組織検査もしたが臓器の外観上及び組織上病変なし」。スラジュさんには既往症もありませんでした。3ヵ月後の6月にご遺体は変わり果てた姿で奥様に戻されました。

				2010年12月27日 入管職員9名が「特別公務員暴行陵虐致死」容疑で
				        書類送検不起訴処分
				2011年 8月 5日 入管職員9名に対して国家賠償請求訴訟を提訴
				2012年 7月 3日 不起訴処分
				2014年 2月19日 東京地裁国賠勝訴
				2014年 3月31日 国側は判決を不服として控訴
				2014年 4月2 日 スラジュさん奥様側も控訴
				2014年 4月   入管職員9名検察審査会申し立て
				2014年10月28日 検察審査会議決 不起訴処分は相当
				2016年 1月18日 東京高裁国賠訴訟 控訴審判決
				2016年 2月 1日 スラジュさんのお母様の名前で国賠訴訟上告

 事件直後の解剖所見では「窒息死の疑いあり」。

 ところが、ご遺族が国賠訴訟をおこしてから2年後 国側は本人も知らない「心臓病」がありその発作による突然死だったと、制圧とは無関係の病死だから責任はないと言いました。

 国側が依頼した6人の医師の中には病死の原因とされるCTAVN(心臓房室結節の嚢胞状腫瘍)の病名すらまともに言えない医師もいました。

 「その制圧に違法性はない…」そんな判決がまかり通る世の中で良いのでしょうか。
正義はあるのでしょうか。

 スラジュさんの奥様は「2度と同じ事が繰り返さないように」と強く訴えています。

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