ひらの亀戸ひまわり診療所
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2013年3月 第82号

胆管がん事件

ひまわり診療所理事長 平野敏夫

 3月14日の夕刊に「胆管がん発症、印刷従業員16人労災認定」という記事が出ていました。この問題は昨年5月、大阪の「SANYO-CYP」という印刷会社で働いていた労働者に胆管がんが多発していたことが判明し、NHKや朝日新聞で取り上げられ問題になっていました。

 胆管は、肝臓で作られる胆汁を十二指腸に流す管で、ここに出来るがんが胆管がんです。比較的高齢者に多いがんですが、この印刷会社では20~40代の若年層に発症しています。原因は、印刷機の洗浄剤に含まれていた有機溶剤の「1,2ジクロロプロパン」と「ジクロロメタン」で、地下1階の作業場で排気装置が十分働かないずさんな管理のもとに使用されていました。この印刷会社で働いていた労働者の胆管癌発症率は、日本人平均の約1200倍になります。

 がんというと手遅れになると死につながる病気で病気の中でも最も恐れられています。がんの原因は色々ありますが、仕事で使用する有害物質で発症するがんを職業癌と言います。亀戸では日本化学工業で働いていた労働者のクロムによるがんが有名です。診療所では年に一回日本化学の退職者の健康診断を行っています。最近ではアスベストによる肺がんと中皮腫が大きな問題になっています。そのほかにも原発で働く労働者の放射線被ばくによる白血病などのがんや塩化ビニールによる肝血管肉腫など歴史的に問題になっていますが、今回の胆管癌についてはほとんど知られていませんでした。img

 がんの原因については分からないこともありますが、肺がんなどはたばこが原因とされ自己責任とされますが、職業が原因になっている癌が結構あるのです。今回の胆管癌のように、今まで知られていない職業癌があるかも知れません。法律で有害物質の管理が事業主に義務付けられていますが、現場ではなかなか守られていないのが現状です。がんは手遅れになると治療できない場合が多いので予防が最も大事です。これは職場の発がん物質の管理的事業主の責任ですが、皆さんも今一度自分の職場を点検してみましょう。

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