ひらの亀戸ひまわり診療所
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2012年1月1日 第77号

新しい年を迎えて

ひまわり診療所理事長 平野敏夫

 昨年は、3月11日の東日本大震災と地震による福島第一原子力発電所の事故で、日本全体いや世界に大きな被害と影響がもたらされました。診療所はさほど大きな被害はなく、カルテ棚や本棚が倒れたくらいで済みましたが、職員の中には「帰宅難民」になり大変な思いをして帰宅した者もいました。

 しかし、患者さんの中には被害を受けた方がおられました。震源地に近い北茨城のじん肺患者さんたちです。常磐炭田で働いてじん肺になり診療所発足当初から通院されています。幸い津波の被害はなかったのですが、家屋が破損された方はおられました。問題は通院でした。常磐線と常磐道が不通になり約2か月近く通院不能となりました。4月になってなんとか可能になった宅急便で薬を送り、5月にやっと常磐道が開通し北茨城での出張診療が可能になったのです。

 また、この間アスベストによる健康障害の問題を共に取り組んでいる建設労働者の組合である全建総連福島県連の組合員が数多く被災されました。1年に2回郡山といわきに出張診療してきました。少しでも励ましになればと、激励の寄せ書きと屋根の修理に使うブルーシート、防塵マスク、そして水、手作りの料理を組合員が避難している組合事務所に届けました。

 地震の当日は診療所の4階の会議室で外国人のための相談会が行われていました。日系ペルー人やアフリカの方たちが帰宅できなくなり、診療所で一泊しました。皆さん地震の経験がなく繰り返す余震におびえながらの一夜だったようです。

 その他の患者さんでも、地震以降精神的に不安定になり不眠などの症状が出たり、心療内科の患者さんではそれまでの症状が悪化した方もおられました。

 被災地への支援は、日常診療で手いっぱいで現地にスタッフを送ることはできませんでしたが、待合室に箱を置くなどして義援金を集めました。これまでに159,729円の義援金を東北広域震災NGOセンターと障害者当事者団体の災害救援組織「ゆめ風基金」に送りました。また、ひまわり通信で紹介しましたが、福島市の子どもたちの健康相談会に参加しました。福島市は約1マイクロシーベルトという高い空間線量が続いているにもかかわらず、原発から離れていることを理由に避難指示が出されておらず、避難したくても避難できない子供たちが大勢います。今後の健康被害が心配で、6月から「放射能から子どもを守る全国小児科医ネットワーク」の協力で健康相談会が開かれています。今年2月には、東京に避難している子供たちを対象にしてひまわり診療所で行う予定です。

 今年も、引き続き地域の患者さんをはじめ様々な人たちと医療活動を進めていきたいと思います。今年もよろしくお願いします。

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