ひらの亀戸ひまわり診療所
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2011年10月31日 第76号

【患者さんインタビュー】

高山 俊雄

インタビューは高山です。

「Kさん(59歳) 。交通事故にて加害者相手の裁判に取り組む。又、国の制度の欠陥を質すために、日夜奮闘中」

【高山】事故にはいつごろ会われたんですか?

【K氏】平成20年7月8日。昼休みの0時45分ごろです。丁度私が信号機のあることが分らず横断歩道を渡ろうとし始めた時に、突然右側からノーブレーキで走ってきたタクシーに跳ね飛ばされました。

【高山】それでどうされました?

【K氏】タクシーの運転手は、「ばかやろう」と言い、バックミラーを見ながら20mほど逃走するつもりで走っていました。それをはっきりしない私の頭でしたが、追いかけて捕まえました。そこで、警察への連絡、救急隊への連絡を自分の携帯でしました。それで、警察が来て、事故の状況を話し、運転手を引き渡して救急車で病院に行ったのですが、警察には、停止せずに車が突っ込んできたことを伝えました。救急隊にも同様のことを伝えたのですが、後で検察庁交通部から現場見取り図と写真をもらい、見て驚いたんです。

【高山】何を驚かれたんですか?

【K氏】運転手は15kmでの走行だったことと、青信号だったから、自分に過失はないという主張なんです。そんなのんびりしたスピードじゃなかった。写真では6m前方の横断歩道上に私はいた訳ですが、この距離だとどう考えても30~35kmのスピードでないと事故にはならない。事故検証結果も、それを裏付けている。ところが加害者のいう信号が青であったという主張だけが採用されて、検察庁でも検察審査会でも不起訴ということになってしまった。実におかしなことは、事故検証記録はずっと後までそれに拘束されるものなのに、その記録は殆ど加害者の意見を基に作られている。被害者は病院に運ばれ、話すことすら出来ない。それを良いことに加害者証言で作られていく。ここを何とかできないかと思っています。私の場合、それを証明するために、いろいろな方にお願いして、車のドライブレコーダーの写真を入手しました。

【高山】すると、今裁判で争っているのは、損害賠償請求ですか?

【K氏】いや、殺人未遂です。
先ほどの事故検証記録と同じように釈然としないことの一つは、救急隊からの搬送通知の問題があります。私は、事故状況を救急隊員にも話したのですが、それがカルテにないのです。だからカルテに記載もない。病院には搬送通知はあるのですが、私が事故状況を話せたことを根拠に話した内容ではなく「意識鮮明」としか書かれていない。これでは、大変な思いで話したのに何にもならない。私の場合は、加害者が嘘をついているものですから、事故当時のそういった証拠があれば、私は問題なく裁判に勝てるのですが、そのことで苦労しています。

【高山】おかしな話ですね。そうした記録を書くルールはどうなっているのか確認する必要はありますが。
ところで、ご病気はMTBIということですが、石橋先生とはいつごろ会われたんですか?

【K氏】2年前です。紹介で。MTBIは検査方法がないといわれているんですが、私の場合、MRIで分るんです。但し、普通の医師は分らない。私がこれまでにお会いした先生で、5人くらいしか分らなかった。ところが、石橋先生は、このMRIからは読めないとおっしゃるんですが、先生がおやりになっている方法で診断すると、結論は同じになるんですね。これがすごいと思っています。
先生は今年の10月24日の毎日新聞の記事の中にWHOでは2007年にも診断基準が整理されて公表されているとおっしゃるのですが、実はそのコピー、あるいは翻訳されたものは見たことがない。というよりも厚生労働省がこれを開示しないんです。この新聞で対談された吉本智信先生(関東中央病院脳外科部長)の著書『高次脳機能障害と損害賠償について』では、2007年の診断基準のことが外国雑誌の全頁に掲載されていると書かれてあります。そうおっしゃりながら、新聞の対談では議論が噛み合っていません。ですから、この基準の開示が最大の問題だと思っています。これをどうやって出させるか。

【高山】厚労省がもし開示しないのであれば、WHOに直接連絡して、入手するという方法もあるんではないですか?

【K氏】そうかも知れませんが、そうしたルートを持っていませんから。

【石橋先生の著書『軽度外傷性脳損傷』の13頁には、WHOの2004年の診断基準が資料として書かれています。インタビューの中では2007年の話が出されましたが、ここでのものは、他の症状の部分も入れて改めてトータルに書かれたものと思えます。】

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