ひらの亀戸ひまわり診療所

高山俊雄

 前期高齢者の年齢を前にして、白内障の手術をすることになってしまった。左目が霧がかかったようで、とても見難くなったのだ。日帰り手術というものもあるようだが、それは、家から病院が近く、何かあったら直ぐに駆けつけられるという限られた人のことだとの説明に、半分納得。

 さて手術だが、入院前日から点眼を始める。そして入院の翌日が手術であった。手術台に上ると、右手に点滴が刺され、左手には自動血圧計がセットされた。そして手術中左目には絶えず蒸留水が流されていた。

 「じっと遠くの電球を見ていてください」と言われ、電球の明かりを見続けながらの手術。麻酔のようなものが入り、目の中央が開けられて、濁った水晶体が砕かれて取り出され、同じ水晶体の位置に眼内レンズを丸めて入れると自然にレンズは広がって落ち着く。この間20分位であったか。眼帯をはめて病室に戻ったが、手術した眼を開けて驚いた。目の三分の1程度が、赤く染まって見えるのである。眼がおかしくなったかと一瞬思い、看護師を呼んで聞いてみた。すると看護師は「良くあるんですよ。黄色だとか青だとか面白いですよ。電球をずっと見ていた関係ですね。太陽を見た後と同じような現象みたいですね。」そんなことは主治医から聞いてなかったな、と思いながら、いずれ消えるという言葉にほっとした。入院は4日であったが、退院して本当に驚いた。眼に飛び込んでくる景色が実にきれいなのだ。生まれたばかりの頃に見た景色は、さぞこのようであったろうと、ふと、在りし日-を想うのであった。この手術で一番大変なのは、何と言っても点眼である。3種類の点眼薬を1日ほぼ5時間おき(4回)に注す。しかも、1種類を注してから5分間経たないと、眼に沁みこまず、次の液をはじき出してしまうという。これを3ヶ月間、毎日注し続けるのである。これから予定の皆さん。白内障の手術で一番大変なのは、手術よりも、この点眼であると肝に銘じて臨まれよ。

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