ひらの亀戸ひまわり診療所

ひまわり診療所 所長 平野敏夫

1922年の水平社宣言の結びの言葉です。永年の部落差別に苦しんできた被差別部落民が1922年水平社を結成し立ち上がりました。この宣言は、「全國に散在するわが特殊部落民よ團結せよ。」の呼びかけで始まり、そして最後に「人の世に熱あれ、人間に光りあれ」と高らかに宣言します。水平社は、現在部落解放同盟となって差別をなくすために運動を展開しています。

 先日、あるイベントに参加しました。1923年の関東大震災の際に、内務省が朝鮮人の取締りを強化する中、朝鮮人が井戸に毒を投げ入れたり放火をしているなどという流言蜚語が広がり、多くの朝鮮人が日本人の手で虐殺されました。このイベントは、殺された朝鮮人の追悼碑を建立しようと運動している団体が主催したものです。この団体は毎年9月の第一土曜日に、数多くの朝鮮人が虐殺された荒川の河川敷で追悼集会を開催していて、私も救護をかねて約20年前から参加しています。この荒川河川敷に虐殺された朝鮮人の追悼碑を建立しようと運動しているのですが、河川敷は国土交通省の管轄ということで認可が下りないのです。要請行動を積み重ねてきたのですが壁は厚く突破は困難でした。このたび荒川の近くの民間の方が追悼碑を建立する土地を提供していただけることになりました。このイベントはその資金を集めるキャンペーンをかねていました。歌ありトークありの素敵なイベントになりました。

 そのトークに永六輔さんが飛び入りで参加したのですが、彼が朝鮮人に対する差別を語る中で部落差別に触れこの水平社宣言の話をしました。そのとき、『「人間に光りあれ」は、「にんげん」と読むのではなく、「じんかん」と読むのです』と言ったのです。私は「成るほど!」と思うと同時にあらためてこの水平社宣言の深さを思い知りました。まさに今格差社会の中で人と人の間が真っ暗闇の中で分断されています。富裕と貧困、正規と非正規、日本人と外国人、男と女そして障害者、高齢者、被差別部落に対する差別。最近では、新型インフルエンザの騒ぎの中で、集団感染があった学校に対して思いやるのではなく誹謗中傷の電話やメールが投げつけられるという事態まで起きています。まさに人と人の間が分断され真っ暗な溝が出来てしまっているのです。職場、地域、医療現場すべて同様です。この暗闇に少しでも光が当たるようにひまわり診療所として何が出来るかなあと考える今日この頃です。

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