ひらの亀戸ひまわり診療所

平賀萬理子

 私は、乗り物の中でも飛行機が苦手だ。乗っている間中、気持ちが恐怖に満ちている。新幹線は早くて便利だが、数時間同じ姿勢で過ごさなければならず、これも大変だ。

 私は夜行寝台車が好きだ。旅の機会がある時は、なるべく夜行列車を選ぶコースにする。

夜行列車は、乗った時から旅のクライマックスが始まる。「ピイッーーー」ノスタルジイな笛の音。用意された寝衣に着換え、これから始まる列車の旅にわくわくしながら、のびのび寝台に横になる。普段、通勤電車で、靴の裏やお尻の下で味わうレールの振動も、背中全体に響く。夜も深まってくると、通り過ぎる駅のホームの光が「ファッ」とカーテン越しに幾度となく繰り返し浮かぶ。なかなか寝付けないけど辛くはない。そして夜汽車の醍醐味は早朝にもある。大きな車窓から刻一刻と朝焼けをじっくり見られるのも好きだ。

 スピードが求められる世の中で、人も列車もゆっくりと流れる時間に身体を置く。

 三月には、東京−九州を結ぶ「はやぶさ・富士」が廃車になる。本数を減らしても良いから残して欲しかった。そして、B寝台の大きな車窓から朝焼けの日本海をもう一度見たかった。

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