ひらの亀戸ひまわり診療所

ひまわり診療所 所長 平野敏夫

 先日、NHKテレビの「クローズアップ現代」で高齢者の薬の問題が取り上げられていました。高齢者に薬の副作用が出やすいので注意が必要というのです。番組の冒頭に紹介されていたのは、骨粗鬆症の女性で、最近ふらつきがひどく思うように歩けなくなったので大学病院で詳しく検査してもらったところ特別大きな異常はなく、長年にわたって服用していた骨粗鬆症の薬(ビタミンD)による副作用を疑われ服用を中止したところ症状が軽くなってきたというのです。最近このような高齢者における薬の副作用が全国の医療機関で問題になっています。

 高齢者に薬の副作用が出やすい原因として、高齢者は腎臓や肝臓の機能が若い人に比べて低下しているため、長年服用していて問題がなかった薬でも、分解する力が低下し体の中に溜まりやすいことが挙げられています。ひまわり診療所でも、他の医者で精神安定剤をもらっていて、なんとなくいつもボーとしている患者さんが、薬をやめてはっきり受け答えするようになったという経験があります。今年4月には、国立医療科学院の研究者グループが、高齢者は避けたほうがいい薬のリストを発表しました。服用によってふらついて転倒する、幻覚が出る、尿の出が悪くなるなどの心配がある薬約70種類をリストアップしたのです。リストには、睡眠薬などの精神安定剤、鎮痛剤、胃潰瘍の薬などが挙げられています。

 問題は、薬を分解する力が低下している高齢者に多くの薬が出されていることです。年をとるとどうしても病気や症状が増えて出される薬が多くなりがちです。不必要な薬が漫然と出されている場合もあります。本当に必要な薬を必要最低限処方すべきでしょう。高血圧や高コレステロールの薬についても本当に必要かどうか慎重に考えるべきだと思います。70歳以上になると血圧は最高血圧が170以上、最低血圧が100以上の人が長生きするという研究データがあるくらいです。40歳代や50歳代の人より降圧剤を処方する基準を高めにしてもいいと思います。80歳まで元気で過ごしてこられた方に、血圧が170あるといってすぐ降圧剤を出す必要はないと思います。また、2箇所以上の医療機関を受診していて薬が重複している患者さんが時々おられます。整形外科で鎮痛剤が処方され、その副作用で胃炎や胃潰瘍を起こすのを防ぐために胃の薬が出され、一方、胃の調子が悪いと受診した内科でまた胃の薬が処方される。これは要チェックです。

 いずれにしても薬は両刃の剣で出来るだけ少なくしたいものです。皆さんも薬のことで疑問があったら遠慮なく質問してください。

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