ひらの亀戸ひまわり診療所

高山俊雄

 私は結婚以来、連れ合いに散髪を頼んできた。ある日「何か出来物が出来たように何箇所か小さな塊があるわよ」といわれた。「どのシャンプー使ってる?」と聞かれ、シャンプー嫌いな私は「石鹸しか使ってないよ」というと「だから良くないんだ」と理由が分かったというように言い「今度から○○色のシャンプーを使ってね」というのだった。仕方なく私は、その色のシャンプーを使うようになった。が、次の散髪のとき、「ぜんぜん良くなっていない」との指摘。続いて「本当に○○色のシャンプー使ってるの?」と疑われる始末。嘘をついている風で嫌だった私は「○○色のシャンプー使ってるよ」とぶっきらぼうに言った。

 そんな頃、連れ合いの妹が鹿児島から上京することになった。妹は美容師の資格があり、以前美容院に勤めた経験もある。連れ合いも妹にシャンプーしてもらうと気持ち良い、と言っていた。私はこの機会に、私の洗髪のどこが悪いのか、よく教えてもらおうと考えていた。丁度妹と二人になった時、疑問をぶつけてみた。黙って聞いていた妹の口から出た言葉に私は本当に驚いた。それは次のような言葉だった。

 「髪の毛だけ洗っているのじゃないかしら?」「え?」私は何を聞かれているのか咄嗟には分からなかった。「つまり、頭皮を洗っていないんじゃないかということ」といわれ、私はきょとんとしていた。

 考えてみると、確かに髪の毛は洗っているが、頭皮まで意識的に洗っていたとは言いがたい。原因はこれだったのか。頭皮を洗うなど初めて聞いた話であったが、これまでの経緯から納得のいくものであった。

 以来、それなら石鹸でも良いではないかと考えるようになったが、どうも私以外に石鹸を使うものがおらず、ボディシャンプーのみ置いてある。

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