ひらの亀戸ひまわり診療所

産業医について

 皆さん、産業医というのをご存知ですか? 私は日常の診療のほかに、産業医としていくつかの会社や自治体に毎月出向いて活動しています。整形外科の三橋さんと内科の名取さんも産業医をやっています。

 労働安全衛生法という法律で、従業員が50人以上の会社は産業医を置く義務があります。大企業では、専属の産業医がいて社内にも保健センターがあります。皆さんの中にも産業医の診察を受けたり、工場の巡回をしているところを見たことがある方がおられるでしょう。

 産業医の仕事は、簡単に言うと「労働者が安全かつ健康に働けるように医者の立場でアドバイスすること」です。そのために毎月1回職場に出向いて作業場などを巡回します。そして、不安全な箇所や健康を害する作業などがあれば指摘して労働者とともに改善する。また、健康診断を行ったりあるいはその結果に基づいて治療や日常生活についてアドバイスします。産業医は、労働者の安全と健康を守るために事業主に「勧告」をすることができます。そして、事業主はその「勧告」を尊重しなければなりませんし、事業主にとって無理な「勧告」をしたからといって解任などしてはいけません。労働者にとって味方につければ非常に心強い存在なのです。

産業医は職場に
出向いて、職場巡視や
安全衛生に関する
討論に参加します。

 先日、厚生労働省が昨年度中にいわゆる「過労死」と「過労自殺」で倒れた労働者の人数を発表しました。それによると、「過労死」で亡くなった労働者が160名、幸い一命を取り留めた労働者が157名、「過労自殺」でなくなった労働者は43名でした。いずれも長時間労働などの過重な負担で脳出血や心臓病で倒れたり、さらに精神的なストレスが加わって自殺した労働者で、合計すると360名になります。まさに毎日1人が過労で倒れているという計算になります。これは大変深刻な事態で、この間のリストラ或いは職場での競争が激しくなる中で、とても安全かつ健康に働ける職場からは程遠い状況になっていると言わざるを得ません。

 このような状況を改善するためには、現場の労働者と事業主の取り組みが不可欠ですが、産業医のアドバイスも大きな力になります。私たちも毎月職場に出向いて、現場の皆さんと一緒に職場改善について話し合い、時には医者として医学的なアドバイスを行っています。医者の仕事として、病気の治療も大事ですが予防も重要です。いや、病気になって苦しむ前に予防することのほうが重要かもしれません。産業医の仕事はその予防の仕事のひとつと言えるでしょう。

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