新しい年を迎えて

理事長 平野 敏夫

 私の診療日は長くお付き合いしている同年代の患者さんが多く、毎年暮れには「一年経つのが早いですね、あっという間ですね」という会話が診察の枕詞になっています。昨年は「コロナ、コロナの一年でしたね」というフレーズがいつもの枕詞に加わりました。

 まさに新型コロナに振り回された一年でした。中国の武漢から始まって、日本では2月のクルーズ船の集団感染、3月の全国一斉休校、4月には緊急事態宣言が出され、夏には流行はやや下火になったものの寒冷期に入って第3波の流行期になり、まだ収まる気配はありません。この間政府の後手後手の対策もあり診療所も振り回されてきましたが、毛利所長を中心に、地域医療に少しでも貢献しようと発熱外来に取り組んできました。コロナの感染が疑われる症状の患者さんは、高性能のフィルター付で中が陰圧になるブースで診療し、8月からはPCR検査も行ってきました。すでに数人の患者さんが出ており、スタッフ一同緊張感を持って診療しています。

 このような状況で、10月に予定していた設立30周年の行事も残念ながら中止せざるを得ませんでした。1990年に開設して30年。最近の待合室は小児科で受診する親子連れが増えて賑やかです。診察室からは予防注射を嫌がる子どもの泣き声も聞こえてきます。地域に根ざした町中の診療所らしくなって来たようです。今年はコロナで大変な状況にもかかわらず、新たな取り組みとして「認知症カフェ」が看護師を中心に始まりました。診療所の患者さんと家族の方が参加され月に1回開催されています。もちろん、アスベスト関連疾患などの職業病の取り組みも引き続き行っています。

 今年もまだ新型コロナの感染は収まっていません。新型コロナの流行で、これまでの格差社会の現実が露わになり、多くの非正規労働者や女性が厳しい状況になっています。そのような人たちが声を上げられるように、診療所としても何か出来ることを考えていきたいと思います。

 今年もよろしくお願いします。