ひらの亀戸ひまわり診療所
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2019年春号 第106号

外国人労働者と健康保険

理事長 平野敏夫

 昨年、週刊誌やテレビで、外国人が日本の医療保険制度に「ただ乗り」している、という事実に反した報道がされました。NHKの「クローズアップ現代+」で、「日本の保険証が狙われる~外国人急増の陰で~」と題して、健康保険制度への無理解かあるいは故意の情報操作によると思われるような報道がされ、いかにも外国人が不正に健康保険を利用しているかのような印象を与えました。しかし、2018年に厚生労働省が在日外国人の国民健康保険利用に関して行った実態調査では、「在留外国人不適正事案の実態把握を行ったところ、その蓋然性があると考えられる事例はほぼ確認されなかった」としています。当然外国人も保険料を適正に納めて加入しているのです。また、厚労省の調査では、2017年度に外国人が国内で使った国保の医療費は全体のわずか0.99%にすぎないのです。

 ところが、政府が2月15日、閣議決定し衆議院に提出した健康保険法などの改正案では、このような外国人による「不正利用」があることを前提にしたような「改正」が含まれています。ひとつは、健康保険を使える扶養親族を原則として国内居住者に限定する、もうひとつは、国民健康保険の窓口となる市町村による在留資格などの調査権を強化するというのです。

 現在、皆さんが加入している健康保険では、国内だけでなく海外に居住する扶養親族も診療所を受診できます。しかし今後、国内居住の扶養親族に健康保険の利用を限定しようとする政府の狙いは、昨年の臨時国会で十分な議論がなく拙速に採決された出入国管理及び難民認定法(入管法)「改正」により今後増えるであろう、外国人労働者の扶養親族に健保を利用させないことにあります。入管法改正により入ってくる特定技能1号の外国人労働者には家族の帯同が認められていません。もちろん現在の技能実習生も同様です。家族の帯同を禁止しておきながら、国に残した扶養親族に健保の利用を認めないのは保険料をきちんと払っている外国人にとって不公平な扱いではないでしょうか。

 また、外国人の在留資格の判断は入管法により法務省入国管理局が行う業務であるにもかかわらず、十分な知識がない管轄外の市町村の国保窓口で行うことにより、偏見を伴った差別的な対応がなされる危険性もあるでしょう。外国人の健康保険による受診の抑制になる可能性もあります。

 少子化による労働力不足を補う目的で外国人労働者の受け入れを促進する為に入管法を「改正」しましたが、今回の健康保険法等の改正案は、外国人労働者を人間としてではなく「外国人人材」としてしか受け入れないという国の姿勢の表れではないでしょうか。改正案は、国会で承認されれば2020年4月に施行される予定です。オリンピック・パラリンピックに来日する外国人の「おもてなし」だけではなく、今後一緒に働くことになるであろう外国人労働者もきちんとおもてなす必要があるでしょう。

 外国人に対する差別的な取り扱い、偏見を助長させるような健康保険法の改正には反対です。

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