ひらの亀戸ひまわり診療所
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2018年秋号 第104号

安定ヨウ素剤

理事長 平野敏夫

 昨日(11月3日)、診療所の会議室で「安定ヨウ素剤自主配布プロジェクト」が行われました。60家族が参加し、家族の分も含めて165人分の安定ヨウ素剤を受け取りました。このプロジェクトは、広河隆一さんというフォトジャーナリストが世話人を務めるDAYS救援アクションの呼びかけで始まった取り組みで、これまでも全国の数カ所で行われています。なぜこの薬を配布するのでしょう。

 2011年3月11日、東日本大震災での東京電力福島第一原発事故から7年を過ぎました。原発事故で放出された放射性物質を被ばくするとがんを発症します。福島県では、これまで事故時に18歳以下だった約38万人から、6月末の時点で164人に甲状腺がんが見つかり、疑いの人を含めると202人に上っています。県や国は原発事故とは関係ないと言い張っていますが、2010年の甲状腺がんの罹患率は全国で10万人あたり8人です。福島の罹患率は10万人あたりにすると約43人になり差は歴然としています。事故による被ばくと関係ないと言うならその証拠を見せてもらいたいものです。

 この甲状腺がんの原因になるのが放射性ヨウ素(ヨウ素131)です。甲状腺はのどにある数センチの臓器で、人間の活動に関係する甲状腺ホルモンを出しています。この甲状腺ホルモンを作るのにヨウ素が必要なのです。甲状腺は、放射性ヨウ素を見分けることができないので、被ばくすると取り込んでしまいます。当然甲状腺は大量に被ばくし甲状腺がんなどの病気になる可能性が高くなるのです。

 福島第一原発事故でも、初期の段階で大量の放射性ヨウ素が放出されました。放射性ヨウ素のほかにもセシウム、ストロンチウム、プルトニウムなどの放射性物質が放出されましたが、この放射性ヨードは半減期(放射能が半分になるまでの期間)が約8日と短いので、事故当初に対処すれば被ばくを防げるのです。その対処にこの安定ヨウ素剤が役に立つのです。事故が起こって早い段階でこの安定ヨウ素剤を飲むと、甲状腺がこれを取り込んで満杯になります。そうするとその後に放射性ヨウ素が飛んできても甲状腺に取り込まれないのです。

 国や自治体は、原発の5キロ圏内の住民に安定ヨウ素剤を事前配布しています。30キロ圏内で自治体に備蓄しているところはありますが、いざというときに取りに行くのは困難です。福島の事故の際にも十分に服用されなかったようです。東京など首都圏にも放射性物質は飛んできました。現在も福島第一原発は安定状態ではありません。また大きな地震があれば大事故となり放射性物質が飛んでくる可能性があります。首都圏でも本来行政が事前に安定ヨウ素剤を配布するべきです。この配布プロジェクトは、行政に配布をうながす意味も込めて行われています。

 3・11から7年7ヶ月を過ぎた10月現在でも避難者は復興庁の発表だけでも5万6千人います。原発事故は終わっていません。にもかかわらず各地で原発の再稼働が進んでいます。最近では四国の伊方原発が再稼働しました。このような状況がある限りヨウ素剤の配布は進めていかなくてはならないでしょう。

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