お も て な し

理事長 平野敏夫

 ここのところ、東京五輪までちょうど2年ということで雰囲気を盛り上げる報道が賑やかです。2年後の活躍が期待されるアスリートの話題がある一方、猛暑を見越した競技の開始時間の変更や、観客の移動による交通機関の混雑が心配されるために通勤時間の変更まで検討されています。五輪で盛り上がるのはいいのですが、東日本大震災の復興、とりわけ原発事故で避難された人々などの苦労が忘れ去られるのではないかと心配です。聖火リレーの出発点を福島にするなどという、とってつけたようなことではすまないと思います。

 ところで、東京五輪といえば東京に誘致するに当たって好評だったプレゼンテーション、滝川クリステルの「お・も・て・な・し」という言葉を最近もよく耳にします。この「おもてなし」について、先日、朝日新聞の社説だったか、外国から五輪に来るお客さんのおもてなしもいいが、お客さんだけでなく日本で働き住んでいる多くの外国人の「おもてなし」、すなわち人権を守ることも大事ではないかという記事が出ていました。

 今、日本には約256万人の外国人が住んでいます。これは日本の人口の約2%です。東京に住んでいる外国人は約53万7千人で東京の人口の約4%です。年々増えていて、1年間で全国で約18万人、東京で約3万7千人増えています。(2017年12月現在 法務省、総務省、東京都推計等より)。これからもどんどん増えるでしょう。皆さんの周りでもコンビニや建設現場などで働く外国人の姿を見ることが多いと思います。

 日本で働く外国人を私たちは「おもてなし」しているでしょうか? 最近、ベトナムからの技能実習生を契約に反して福島の除染労働に従事させた企業が、厚生労働省から注意され技能実習生の受け入れを止められたと報道されました。またパスポートを取り上げられ、たこ部屋同然の状況で働かされて、我慢できずに逃げて労働組合に相談したベトナム人労働者もいます。労働災害になってもちゃんと労災保険の手続きをしてくれない企業。牛久にある外国人収容所、東日本入国管理センターでは、長期の厳しい収容を苦にして、5月には3人が自殺未遂をしています。とても「おもてなし」しているとは言えないでしょう。

 日本政府は、建設や介護などで人手不足になることを見込んで外国人労働者の受け入れを増やしていくことを考えています。ところが日本の技術を学んで母国に帰り、学んだ技術を生かすという「技能実習生」という名目で、一時的な受け入れです。にもかかわらず政府は不足する労働力を補うと公然と言ってはばかりません。ただ不足している労働力を補うだけで、外国人労働者の賃金、労働環境、言葉、医療などの人権をきちんと保障しないと、「おもてなし」をしていることにはならないでしょう。

 これからどんどん増える外国人労働者とどう共生していくか、私たちも考える必要があるでしょう。